話題のう〇〇漢字ドリルを小学生一年の息子に見せたところ、やはり U-WORD 大好きな年頃真っ盛りなので、残念ながら大興奮してしまいました。(注:実地調査です)U-WORD の他にも C-WORD もありますが、この2大ワードは多くの男子小学生低学年~幼稚園生を惹きつけてやまない言葉で、中学年、高学年と成長するにつれ自然と消滅していきます。ただ、その得体のしれない力を利用して、勉強への動機づけを図るというのが一見安直ですが、これまでにない手法でした。

 巷では品性に欠けるであるとか真の国語力が身につかなくなるとか子供の頃からう〇〇に親近感を得てしまうとか、様々な懸念も出ているようです。私も好ましくはないとは思いますが、学校で漢字の書き取りテストが出る以上それに対処しなければならないのは事実です。そしてそれは、子供が勉強嫌いで全く机に向かわないとお悩みのご両親にとっては切実な問題です。

 これは正攻法ではないですが、勉強嫌いの男子小学生でも漢字書き取りテストの対策ができてしまうという、プログラミングでいえば「ハック」の本となのだと思います。そして悪影響を差し引いても「ハック」によって得られる実の利のほうが遥かに大きいと判断する大人が多いので、ここまでベストセラーになっているのでしょう。ただし、女子小学生にはその効力は若干落ちるのと、個人差はありますが1~2年生くらいまでが効力の限界だと思いますが。

 そういえば私が受験勉強をしていた頃、英単語の DUO という問題集がありました。この問題集では、受験に出る英単語のみを使用して全ての例文が作成されていて、一つの例文のなかに何個も重要な英単語が出てくるので、最短距離で多くの英単語に触れることができ、とても効率的に学ぶことが出来ました。これも英語の読解力をつけるという意味では全く役に立ちませんが、英単語のみを覚えるという日本の受験用英語の習得が目的あれば極めて有効な「ハック」です。

 この本もそれと同じで、これまで漢字ドリルに見向きもしなかった小学生が、このおかげで漢字の書き取りテストの練習をするようになったのであれば、それが良いことかどうかは別として、有効であると判断せざるを得ません。

 当道場でもこの手法を導入しようというアイディアを半分冗談(本気?)で出した人もいますが、当然ながら0.1秒で不採用となりました。当道場では漢字の書き取りのような、答えがあらかじめ用意されているような問題ではなく、自分の頭で自分なりの答えを産み出す力を鍛える場であり、そうしたハックは通用しないからです。今の教育の現場もそういう場であればこうした本は生まれなかったと思います。

 その上で、この本は現在の学校教育のハックツールとして生まれただけで、ある種の問題提起を我々に投げかけているのではないでしょうか。まず、このようなハック本が通用しないように私たちの教育を改めていくのが筋であり、この本への批判は、大人である我々自身を含め、こういったものを生み出してしまった今の教育の在り方へと向かうべきだと思います。